新型コロナウイルス感染拡大防止のために自宅で過ごす方に向けたメンタルヘルス情報サイトです

活動すること、しないことと、こころの元気との関係

行動活性化

今回の記事では「なぜ活動しないと元気がなくなるのか」のメカニズムをご説明していきます。

まずは活動自粛や新型コロナウィルス感染への不安がストレスとなっている佐藤さんと鈴木さんの事例で見てみましょう。

元気の出ない佐藤さん

活動自粛のために好きだったことができなくなってしまった佐藤さん

佐藤さんはもともと家の外で活動する時間が多く、平日は仕事終わりにはジムで運動したり同僚と食事に行ったりして過ごしていました。休日も趣味のスポーツ観戦をして楽しんでいました。そのため、活動自粛要請が出されて以降、好きだった活動のほとんどができなくなってしまいました。佐藤さんは新型コロナウィルス感染拡大防止のために「3つの密」に当てはまるような行動を避けてなるべく家で過ごすようにしていますが、家で何をして過ごしたら良いか分からず、なんとなくテレビを見たりして過ごすものの、気分は晴れません。自分なりに家でも楽しめることを考えようとしてはみるものの、どれも以前の活動に比べるとつまらないものに思えて活動する気になれず、さらにうつうつとした気分になってしまいます。

不安が強い鈴木さん

新型コロナウィルスに感染するかもしれないことが不安で活動できなくなってしまっている鈴木さん

鈴木さんは元来心配性な性格でしたが、新型コロナウィルス感染症に関するテレビの報道やインターネットのニュースを見ているうちに、自分が新型コロナウィルスに感染するかもしれないことがとても不安でたまらなくなってしまいました。鈴木さんの職場では在宅勤務が認められているため、通勤電車に乗らずに済むことは鈴木さんにとって安心材料でしたが、ずっと家で過ごしているうちに外出すること自体がとても不安になってしまいました。家では特にすることもないせいか、時間があるとつい新型コロナウィルスに関する情報ばかり集めてしまい、そのたびに不安になったり気が滅入ってしまいます。何とか気晴らしをしようとは思うものの、何をやるにしても「それがきっかけで新型コロナウィルスに感染してしまったらどうしよう」と思うと不安で何もできず、結局家から出ずに新型コロナウィルスに関するニュースばかり見て過ごしてしまい、ますます不安でゆううつな気分になってしまいます。

佐藤さんと鈴木さんの事例を読んで、多少なりとも「当てはまる箇所があった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

このように、人は悩みやストレスを抱えていると、行動の幅が狭くなってしまいがちで、その結果にこころの元気がどんどん下がっていってしまうものなのです。

次に、このような状況でも自分なりに活動を楽しめている高橋さんの事例を見てみましょう。

楽しめている高橋さん


不自由な状況ながらも活動できることを見つけて楽しんでいる高橋さん

高橋さんは平日は仕事がとても忙しく、休日は家で寝て過ごすような生活をしていました。しかし、新型コロナウィルス感染症の流行の影響から、今は以前よりもかなり業務量が減り、基本的には在宅勤務となったため、家で過ごす時間がずいぶん増えました。取り組んでいた仕事がとても好きだった高橋さんは、思うように仕事ができなくなってしまったことに落胆し、また、これまでほとんどの時間を仕事に費やしていたため、当初は家で過ごす時間を持て余してしまい、ゆううつな毎日を過ごしていました。しかし、高橋さんは「せっかく家で過ごせる時間が増えたのだから、今までできなかったことをやってみよう」と考え、苦手だった英語の勉強のためにオンライン英会話を始めました。最初は英語の勉強のためだけに始めた英会話でしたが、講師と話しているとそれだけで少し気が晴れることに気付きました。また、もともとコレクター気質だった高橋さんは、「いつか使おう」と思って購入しては押し入れにしまっていた色々な物(家でカクテルを作るためのシェーカーセット、好きなアニメのプラモデル、体を動かして楽しむテレビゲーム、小説や漫画、等)があることを思い出し、家で過ごす時間をそれらの趣味に使うことにしました。もちろん、以前のようにバリバリ仕事をしたり、そのあと同僚と飲みに行ったりしていた時の方が充実感や達成感を感じられてはいましたが、今の状況の中で高橋さんなりにそれらの活動を楽しんで生活できており、「時間があるうちに次はあれをやってみよう」と前向きな気持ちで過ごすことができています。

3人の違いは?

佐藤さん、鈴木さん、高橋さん、3人の事例を紹介しました。さて、新型コロナウィルス感染症の影響によるストレスからゆううつで不安な日々を過ごしている佐藤さんや鈴木さんと、同じように新型コロナウィルスのストレスを感じながらも、それなりに何とか今の生活の中から楽しみを見つけることができた高橋さんとの違いは何でしょうか?

佐藤さんや鈴木さんと、高橋さんとの最も大きな違いは、「楽しさや達成感につながる活動ができているかどうか」です。「高橋さんはたまたま家で楽しめることがあったから」と思われるかもしれませんが、こころの元気を保つためは「楽しさや達成感につながる(可能性のある)活動をする」ことがとても大切です。

まとめ

「なぜ活動しないと元気がなくなるのか」のメカニズムについてご理解いただけたでしょうか?

次の記事では、行動が気分に影響を与えるメカニズムをご理解いただけるように、ご自身の行動パターンを振り返っていただく簡単なワークをご用意しています。ぜひお試しください。

自分の生活パターンを振り返ってみよう
今回は、人の行動がその人の気分に影響を与えるメカニズムを見てみましょう。 以下に紹介する図は、前回の記事で紹介した佐藤さん、鈴木さん、高橋さんの事例を「その人が置かれている状況」、「その人のした行動」、「その結果」、の3つの視点から整理した...