前回の記事では、環境の変化で一時的に眠れない方に向けて睡眠で悩んだ時に試してみたい生活のコツをお伝えしました。
この記事では、特別なストレスの原因ははっきりしないけれども、長い間睡眠のトラブルに悩まされ、悪いサイクルから抜け出しにくくなっている方に向けたアドバイスをご紹介します。
不眠につながる考え方のクセ
眠れないことに悩んでいる時は、下記のような考えが浮かぶことがありませんか?
「眠れないと仕事でミスをする!」
「今日も眠れなかったらどうしよう」
こういう気持ちから、眠るには早すぎる時間(夜7時~9時)に布団に入り、まだ頭が覚醒しているためにいろいろなことを考えてしまい、「あぁ、こんなに考えちゃダメだ!」と焦る気持ちがより大きくなることがあります。早く布団に入ると、一時の安心感が得られるかもしれません。しかし、長期的にみると不眠の改善につながらないことがあります。
「〇時間寝ないとカラダがもたない」、「仕事でミスをする」、といった考えが浮かんでなかなか寝付けない人は、過去にそういった経験があったからかもしれません。けれど、必ずまた同じ結果になるとは限りません。「日常生活に支障がなければ、まぁいいか」「眠れなくても大丈夫」といった感じでなるべく気楽に考えるよう心掛け、こだわりを手放すことも大切です。
睡眠の事実
脳波のデータによると、健康な人であっても、一晩で人間は数十回以上も目覚めていることがわかっています。睡眠に問題の無い方は、目が覚めたとしてもまたすぐに眠りに落ちるため、目が覚めたことが記憶に残りませんが、不眠のある方は、目が覚めるたびに時計を見てしまうなど記憶に残りやすい行動をしたり、途中で目覚めた回数にこだわってしまう傾向があります。また、加齢によって自然と途中で目覚める回数も増えてきます。若いころと比べて睡眠の質が変化したのは当然のことかもしれません。
「自分の日中の生活に支障があるかどうか」が、睡眠に問題があるかどうかの判断のめやすとなります。おだやかに、日中の活動がこなせているのであれば、睡眠の状態を気にしすぎる必要はないかもしれません。
不眠につながる行動のクセを見直す
眠くないのに布団に入る、目覚めるたびに時計を見る、眠れなかった次の日は日中も横になっている…
そんな、なにげない行動が不眠の悪循環を作っていることがあるかもしれません。行動のクセを修正するためには、3つのSTEPがあります。
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- 自分の状態に気付き
- 今までと違うパターンを試し
- 良いパターンを身につける
自分自身のコンディションや睡眠のリズムを観察し、課題を特定します。そして、今までやってこなかった新しい習慣を取り入れて、結果が良ければ今後も続け、あまり効果がなければ違うパターンを取り入れていきます。効果の判断は1日単位ではなく、1週間単位で行いましょう。
例えば…
「少し眠いが、朝起きる時間を一定にする。朝7時にカーテンを開け、伸びをする」
「その日の寝つきが良かった!」
良いサイクルに入れそうな行動を取り入れ、自分に合うパターンを見つけていくイメージです。
「工夫したのに眠れなかった…やっぱりだめだ」という判断はわきに置いておき、「眠れなくても日常生活に支障はない」というゆるやかな気持ちを持ちながら、良いパターンを探してみましょう。
入眠儀式をつくろう
眠る前のルーチン(入眠儀式)を作ると、眠りやすくなることが知られています。脳が「あ、眠る時間だな」と認識し、身体を眠りに導きやすくなります。トイレに行く、水を飲む、など普段何気なくやっている行動も入眠儀式の1つです。
そのほかには、
・子供に絵本の読み聞かせをする
・日記を書く
などがあるかもしれません。自分に合う入眠儀式を探してみると、自然な眠りを得られやすくなります。
緊張をほぐす深呼吸
心と身体の緊張をほぐし、リラックスに導くために、寝る前に行う呼吸法もおすすめです。布団に入ってから、音声ガイドを聞いてみましょう。10分ほどの音声ガイドなので、聞き終わるまでに眠れなくても焦る必要はありません。少しでも身体の力が抜ける感じを味わえればOKです。
まとめ
眠れないことで悩んでいる方は、すぐに得られる結果ばかりに目がいきがちで、「やっぱり寝られない。」とますます不眠にとらわれてしまう方がいます。「いまここケア」でご紹介しているような、薬を使用しない睡眠サイクルの調整では、1週間、2週間の単位で効果を振り返りながら、長期的に効果を得ていくことをめざしています。
「今日もまた眠れないかも」という不安を、「眠れなくても大丈夫」という考えに置き換え、良いパターンが見つかるように行動の工夫を続けてみましょう。
<参考文献>
この記事の内容は、以下の情報をもとに作成されています。
・Altena E, et al., Dealing with sleep problems during home confinement due to the COVID-19 outbreak: practical recommendations from a task force of the European CBT-I Academy. J Sleep Res. 2020. doi: 10.1111/jsr.13052. [Epub ahead of print]
・岡島 義・井上雄一. 認知行動療法で改善する不眠症. 2013. すばる舎.
・日本睡眠学会教育委員会 (編). 不眠症に対する認知行動療法マニュアル. 2020. 金剛出版.
・厚生労働省. 健康づくりのための睡眠指針2014.
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf